技術情報
以下に製品情報の詳細を説明します。
- 2回投与に関する説明
- 投与プログラム
- 研究による効能の裏付け
- インプロバックによる無去勢豚(雄豚)の発育の期待
- インプロバックによる飼料要求率改善の期待
- インプロバックによる肉質改善への期待
- インプロバックによる肉質改善への期待
- インプロバックによる環境改善に対する期待
- 豚にもヒトにも安全
2回投与に関する説明
インプロバック2回投与の説明から、本製剤の使いやすさがお分かりいただけます。
- インプロバックの初回投与は、豚の免疫系に抗原刺激を与えますが、精巣のサイズや機能は変化しません。2
- 2回目の投与により、精巣機能を抑制する免疫反応が刺激されます。2
- インプロバックが作用すると、雄臭レベルが急激に低下します。アンドロステノン産生が抑制され、スカトールが減少し、精巣のサイズが小さくなります。2
- 食肉処理場への出荷時期は、2回目投与後4~6週間です。3
2 mL を耳根部に皮下注射します。
- 初回投与は生後11週齢以降の豚に投与可能です。
- 2回目投与は、初回投与後少なくとも4週間あけ、出荷4~6週前までに投与します。
「これほど効果が期待される製剤はいままで見たことがありません。」
- John Crane
アソシエイトダイレクター・グローバルディベロップメント ファイザーアニマルヘルス事業部門
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豚肉の雄臭予防効果を測定する重要な点は、豚肉が官能閾値マトリックスのどこに該当するかを評価することにあります。官能閾値とは、枝肉に雄臭があると認められる最小の数値です。これらの数値は一定ではないため、市場で評価するには、雄臭のあるものとないものを正確に区別できる一定の数値でなくてはなりません。4 そこで閾値として脂肪組織中のアンドロステノン1.0 µg、スカトール 0.20 µg を用いることが提案されています。
外科的去勢豚の最大3%が官能閾値を超える雄臭レベルを有することが、試験結果で示されています。これは、外科的去勢等の現在の技術では雄臭予防効果が100%ではないことを示しています。5
ニュージーランドとオーストラリアで実施された以下のようなインプロバックに関連する試験では、369頭の雄豚(体重100~105kg)のうち約半数が、脂肪組織中に官能閾値を超えるアンドロステノンとスカトールの一方または両方を有し、雄臭が疑われました。
インプロバックを投与すると、雄臭化合物の濃度は殆どの雄豚で官能閾値未満まで低下しました。インプロバックで免疫学的去勢効果を受けた雄豚の雄臭レベルが官能閾値未満になったというだけでなく、そのレベルは非常に低い値であることを、次図が示しています。
- インプロバックによる免疫学的去勢は、現在おこなわれている外科的去勢と同様に、雄臭の軽減が期待できます。2,3
- インプロバックの作用機序から、精巣の正常下降、あるいは停留睾丸(陰嚢内に下降せず体腔内に残る)に関わらず有効であることがわかります。
「インプロバックの多数の治験を世界中で実施しましたが、地域および試験規模に関係なくデータはすべて同じ結果を物語っています。すなわち、この製剤を使用することで外科的去勢と同様に、雄臭をコントロールすることができるということです。」
- John Crane
インプロバックによる無去勢豚(雄豚)の発育の期待
雄豚は、インプロバックを投与された後も、2回目の投与までは、無去勢豚が生まれながらに保有する雄としての成長が期待できます。
- 雄臭をコントロールするために外科的去勢を早期に行うと、雄としての成長が抑制され、その結果、雄豚と比較し、成長率および飼料効率が低下し赤肉量が減少する傾向があります。
- 外科的去勢をすると雄豚と比較し、より多くの飼料を必要とするため、飼料コストが高くなり、また背脂肪厚が増加する傾向があります。 2,6
- インプロバックは、雄臭発生をコントロールするばかりでなく、外科的去勢豚と比較し、飼料要求率および背脂肪厚の改善が期待できます。2,3,6–10
インプロバック野外試験結果において、外科的去勢豚と比較し、下記項目の改善が期待できました。
- 飼料要求率2,3,7–9
- 「正肉歩留まり」3,6,7,9
- 背脂肪厚2,3,7,8
一部の試験では、免疫学的去勢製剤を投与した雄豚は外科的去勢豚と比較し、平均1日増体量の改善も期待できました。3,8,9
上記の表が示すように、安定して飼料要求率の改善が期待できます。このことは、世界中で実施した多数の試験で、幾度となく証明されました。3
ドイツで実施した試験(1件)では、外科的に去勢された豚と比較してインプロバック豚の飼料効率が9.9%向上しました。本試験では一方で雄豚に、外科的去勢を実施、またはもう一方では外科的去勢を実施せず、生後11~12週目と20~21週目にインプロバックを投与しました。この試験は、南ドイツの養豚業界を代表する民間の研究農場で実施され、インプロバック豚は外科的去勢豚と比較し、正肉歩留まり率が1.9%有意に向上し、特に背脂肪厚が9.9%有意に減少しました。
他の試験でも同様な改善が示されています。オランダでは、インプロバック豚の飼料要求率は外科的去勢豚に比べ8.9%有意に改善され、米国の試験では、飼料要求率は8.6%改善されました。
インプロバックで免疫学的去勢を受けた雄豚からは、外科的去勢豚および雌豚の品質と同等の豚肉が生産されます。
肉質(肉色、霜降り、pH、肉汁損失)を調査した試験では、インプロバックで免疫学的去勢を受けた豚の肉質は、外科的去勢を受けた豚の肉質に等しいという結果でした。外科的去勢豚とインプロバックで免疫学的去勢を受けた豚との間で、pH、肉汁損失、せん断力、肉色、筋肉内脂肪などを比較したレポートが17件発表されており、11 pH、肉汁損失、せん断力、または肉色については、一貫した試験結果はありませんでした。このことより、インプロバック免疫学的去勢製剤の投与は、pH、肉汁損失、せん断力、または肉色など、肉質を示す客観的なパラメーターに良い影響も悪い影響も与えないことが推察されます。
以下の写真はアジアでの試験結果の実例で、外観は、系統種や飼料内容の違いから、他の地域で飼育される豚の肉質と異なるかもしれませんが、外科的去勢豚に比べ、インプロバック豚の背脂肪厚が減少傾向にあることがわかります。
1) 無去勢雄豚 | 2) インプロバック投与豚 | 3) 外科的去勢豚 |
pH、肉汁損失、せん断力は、消費者による肉の柔らかさの評価に直接影響するため、インプロバックを投与された雄豚と外科的去勢を受けた雄豚との間で、これらのパラメーターが類似していたという事実は、インプロバック投与豚肉が最低でも外科的去勢豚の肉と同様に柔らかいということを示しています。これはその他の官能試験でも同様な結果が得られています。11
肉質官能試験は、訓練を受けた官能試験パネリストまたは消費者パネリストにより実施されており、インプロバックで免疫学的去勢を受けた豚の肉質は、外科的去勢を受けた雄豚または雌豚の肉と同様の品質であることを示唆しています。17件のうち15件の試験で、免疫学的去勢製剤を投与した雄豚の肉は、外科的に去勢された雄豚または雌豚と同じ品質であると判断されました。英国の試験(1件)では、インプロバックで免疫学的去勢を受けた雄豚の肉は、外科的去勢豚の肉よりも肉質が良いと判断されました。一方、ブラジルでおこなわれた試験では、免疫学的去勢製剤を投与した雄豚の肉は、外科的去勢を受けた雄豚の肉よりも官能試験の実施により高い肉質を有していると判断されました。11
ある試験では、インプロバック2回目投与後2週間以内に、精巣でのテストステロン産生が90%以上低下しました。2,3,9
- ある試験では出荷時において精巣の重さは約50%減少し、平均サイズは明らかに減少しました。2,3,7
- インプロバックで免疫学的去勢を受けた雄豚の精巣サイズが減少する傾向にある為、食肉処理場でのインプロバック投与豚の免疫学的去勢効果確認の参考になります。
インプロバック投与豚 精巣サイズは食肉処理時の効果確認の参考となります。精巣は縮小し陰嚢上部に残っており、インプロバック投与効果が推察されます。 |
無去勢雄豚 精巣は通常の大きさであり、このことから雄臭発生が疑われます。 |
- インプロバックは、環境に有害となる化学物質や微生物学的成分を一切含みません。
- さらに、養豚がもたらす環境への負担を少なくし、養豚経営への貢献が期待できます。
どうしてでしょうか? インプロバックを投与すると肥育豚において、飼料要求率の改善だけではなく、排泄糞量の減少も期待できます。このことは、温室効果ガス発生と、排泄物に含まれる窒素およびリン量を低減することに結びつき、豚生産による二酸化炭素排出量の減少から生じる環境改善が期待できます。
なぜ雄豚の排泄物が少なくなるのでしょうか?
インプロバック投与豚は外科的去勢豚と比較し、飼料摂取量が減少する傾向があるからです。給餌量が減ると、生産者のコストを節約するだけでなく、環境へも有益となる可能性があります。
どうしてでしょうか? 給餌量が減少すると、豚に与える穀物を育てるために使う土地と水が少なくてすみ、穀物生産が減れば、栽培、収穫、飼料工場への運搬に使う燃料も減ることが推察されるからです。
穀物生産が減少すると、さらに穀物を家畜飼料に加工するために使う電力や水量の減少が期待できます。
その結果、穀物の栽培と家畜飼料の生産に消費する燃料と電力が減り、農場機械と運搬車が産出する温室効果ガス低減へも期待が持てる訳です。
インプロバックで免疫学的去勢を受けた豚肉は、ヒトの食用豚肉として安心して用いることができます。
- インプロバックは遺伝子組換え成分だけでなく、環境にリスクを与える可能性のある微生物製剤も含んでいません。
- インプロバックは経口摂取しても薬効を示しません。12,14
- インプロバックは免疫学的去勢効果により、外科的去勢時と同様の雄臭抑制効果が期待できます。2,5,13
- インプロバックにより、豚がホルモン活性を示すことはありません。1
- インプロバックは、2011年10月現在63ヶ国で休薬期間なしの製剤として公的機関より、承認を得ています。1
- オーストラリアとニュージーランドでの11年以上の使用と、南アフリカ、ブラジル、メキシコおよびその他の国々での3年以上の使用実績から、多くの消費者が、インプロバック投与豚肉をすでに食べています。
Technical Bulletins(技術情報)
IMPROVAC Consumer Acceptance TB.PDF(消費者によるインプロバックの受け入れについて)(英語版)
IMPROVAC Food Safety TB.PDF(インプロバックの食品安全性について)(英語版)
IMPROVAC Mode of Action TB.PDF(インプロバックの作用機序について)(英語版)
IMPROVAC Sensory TB.PDF(インプロバックの官能試験評価にについて)(英語版)