以下にインプロバックと雄臭について、よくある質問とその回答をまとめてあります。
- インプロバックとは何ですか?
- 豚の雄臭とは?
- インプロバックはどのように働くのですか?
- インプロバックは雄臭を除去しますか?
- インプロバックの成分は何ですか?
- インプロバックはホルモンですか?
- インプロバックは遺伝子操作組換え成分を含んでいますか?
- インプロバックを投与した豚の肉は食品として安全ですか?
- なぜインプロバックが作用するには2回投与が必要なのですか?
- もし作業者が誤って自分にインプロバックを投与してしまったらどうなりますか?
- 誤ってヒトがインプロバックの注射を受けてしてしまったら、どうすれば良いですか?
- 作業者の危険性を軽減するにはどんな手順をとればよいですか?
- インプロバックを投与した豚の外見の特徴は?
- インプロバックを投与した豚の肉は外観または味が違いますか?
- インプロバック投与により期待される主な利点は何ですか?
- インプロバックは26~27週齢を過ぎて食肉処理される豚にも使用できますか?
- インプルバック投与豚は、ケンカや乗駕のような雄行動を示しますか、その場合どう対処できますか?
- インプロバックは雄臭を100%コントロールしますか?
- インプロバックは成熟した無去勢雄豚に使用できますか?
- インプロバック使用における消費者に対する利益は何ですか?
- インプロバック使用はなぜ社会に貢献できるのですか?
- インプロバックは環境に優しいですか?
- なぜインプロバックがオーストラリアとニュージーランド以外の国々に導入されるのに長い期間かかったのですか?
- 何カ国の市場でインプロバックは承認されていますか?
>雄臭に関してよくある質問
- 雄臭の原因となる成分は何ですか?
- これらの成分はどのように雄臭の原因となるのですか?
- 雄臭の発生割合は?
- どうしてすべての雄豚が雄臭を発生しないのですか?
- 雄臭は病気ですか?
- 雄臭は危険ですか?
- 雄臭はと殺前に確認可能ですか?
- どのような方法で雄臭はコントロールできますか?
- 雄臭をコントロールする他の方法がありますか?
インプロバックは、豚の免疫システムに作用して精巣の活動を抑制し、雄臭をコントロールする新しいコンセプトの免疫学的去勢製剤です。
豚の雄臭とは、性成熟期に達した雄豚の肉を調理または食べた時に多くの消費者が感じる、不快な臭気や味覚のことです。それは、尿、糞便や汗の臭気に例えられるものです。豚の雄臭は、去勢されていない雄豚の肉で、最も臭いを感じます。今日、ほとんどの雄豚が去勢され豚肉の雄臭を防止していますが、通常、去勢を実施せず、そのかわりに雄豚を若年期に食肉処理する国々(英国、アイルランド、オーストラリア等)もあります。雄臭についての詳細は、このFAQの最後にある質問を参照するか、www.boartaint.com をご覧ください。
インプロバックは、豚の免疫システムに作用して、最終的に雄臭の原因となる成分の蓄積を抑制し、雄臭をコントロールします。
いいえ、インプロバックには、雄臭を除去する直接の作用はありません。免疫系を介してのみ作用します。性的に成熟した雄豚の精巣は、雄臭の原因となるアンドロステノンのようなステロイドホルモンを生成します。精巣のステロイドホルモンには、肝臓で、腸内細菌により生成され雄臭の原因となる、スカトールと呼ばれる物質を除去する能力を低下させる作用もあります。インプロバックによって精巣活動が抑制された結果、アンドロステノンの生成が抑制され、さらに肝臓におけるスカトールの代謝・除去が促進されます。インプロバックを2回目に投与した後、約2週間でアンドロステノンとスカトールの産生能が明らかに抑制されます。
インプロバックに含まれる抗原は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の不完全な合成類縁体に免疫反応を惹起させるためのキャリアタンパク質を結合させたものです。結合した GnRH は、天然の GnRH と類似しているため、天然 GnRH を中和する抗体の産生を助けますが、その構造は不完全でありホルモンとしての活性はありません。キャリアタンパク質は、ヒト用ワクチンに広く使われているものの1つです。
インプロバックの合成 GnRH 類縁体は天然 GnRH に類似していますが、同じものではありません。
大きな免疫原性キャリアタンパク質の表面に結合した合成 GnRH 類縁体。
インプロバック抗原(キャリアタンパク質に結合した合成 GnRH 類縁体)は、下垂体受容体には結合できないのでホルモン活性はありません。
インプロバック抗原により誘導された抗体は、天然 GnRH の中央にある大きい末端を認識して結合し、天然 GnRH を中和します。それにより、天然 GnRH は下垂体と結合できなくなります。
いいえ、インプロバックはホルモンではなく、免疫学的去勢製剤です。インプロバックには直接的なホルモン作用や薬理作用はありません。
いいえ、インプロバックは遺伝子組換え成分は含んでいません。
はい、安全です。インプロバックは世界各国の規制当局から、休薬期間なしの製剤として認可されており、2回目注射4週間後から、豚肉を安全に消費できます。現在豚生産に使用されているほとんどのワクチン製剤と同様に、インプロバックの有効成分はタンパク質であり、注射時のみ作用するので、ヒトへの食品安全性は確保されています。経口投与した場合でも薬理作用がないことは、高用量試験で示されてきました。インプロバックを投与した豚肉は、1998年以降、オーストラリアとニュージーランドで安心して消費されています。
1回目の投与は、精巣機能または雄臭には作用しません。インプロバックの初回投与は、豚の免疫系を単に「準備」させるだけで、2回目の投与に迅速に反応し、免疫学的応答を引き起こした結果、雄臭成分産生が抑制されます。
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もし作業者が誤って自分にインプロバックを投与してしまったらどうなりますか?
実際の作業では、自分に誤って投与してしまう危険性は非常にまれであるといえます。もし誤って自分に投与してしまったら、豚で見られるような作用がヒトにも現れる可能性があります。すなわち、男性、女性に関わらず、一次的な性ホルモンや生殖機能の減退をきたす、あるいは妊娠に有害な影響を与えるかもしれません。初回投与時よりも、2回目または連続して誤注射が起こった場合、これらの影響が起こる危険性が大きくなります。単回投与後、豚と同様の機序で、2回目の投与に反応するよう免疫応答が成立している可能性があるので、1度誤投与を受けた人は、今後の本製剤の使用は避けてください。
誤ってヒトがインプロバックの注射を受けてしてしまったら、どうすれば良いですか?
誤ってインプロバック投与をヒトが受けてしまった場合、穿刺部を水道水で洗浄し、添付文書を持参して直ちに医療機関の指示を受けてください。1回の投与でも、豚と同様の機序で、2回目の投与に反応するよう免疫応答が成立している可能性があるので、誤投与を受けた人は今後インプロバックの投与は避けてください。
ファイザーアニマルヘルス事業部門は、自己投与の危険性を大幅に軽減する、安全機能を強化した注射器の開発に積極的に取り組んできました。インプロバック投与にはこの専用注射器を必ず使用し、すべての使用者がインプロバックを使用開始する前に正しい免疫学的去勢製剤の使用手順のトレーニングを受ける必要があります。
外科的去勢豚に比べ、最も明らかな差は精巣が存在していることです。この精巣は、2回目投与後その発達が抑制されるため、免疫学的去勢製剤を投与していない正常な雄豚よりもかなり小さくなっています。したがって、食肉処理場ではインプロバックが正しく投与されている豚か否かがすぐに分かります。
いいえ、同じです。インプロバックを投与された豚は、肉質においてその外観、味、臭いともに外科的去勢豚または雌豚と全く同じです。消費者調査が繰り返し実施され、インプロバックを投与された豚の豚肉は、検出可能な雄臭の痕跡もなく、外科的去勢豚または雌豚と全く同じ肉質であることが確認されています。
生産者 にとって、インプロバックの主な利点は、外科的去勢に頼らず、雄臭のない高品質の豚肉生産および飼料要求率などの生産性改善により、高い収益性が期待されることです。
パッカ ーにとって、インプロバックの主な利点は、正肉歩留率が高く、外科的去勢豚と同じ高品質で雄臭がなく、適度な背脂肪厚の枝肉が得られることです。豚にやさしく環境を配慮した方法で生産される高品質の豚肉を市場に供給することが期待されます。
消費者 にとって、インプロバックの主な利点は、動物にやさしく環境に配慮した方法で、安全で高品質な豚肉供給が期待されることです。
豚 にとって、インプロバックの主な利点は、外科的去勢による痛みとストレスから解放されることにあります。
インプロバックは26~27週齢を過ぎて食肉処理される豚にも使用できますか?
簡単に答えると、使用できます。用法用量通りに使用していれば、インプロバックは高齢で食肉処理される豚でも雄臭をコントロールします。しかし、一般的に豚は、26~27週齢に達するまでに食肉処理されます。
2回目の投与を約22~23週齢まで遅らせ、27週齢を過ぎてから食肉処理されると、問題が起こることがあります。この場合、インプロバックは雄臭をコントロールしますが、2回目投与時には豚はさらに成熟しているので、精巣は大きく、そのためインプロバックが正しく投与されたかどうか、農場および食肉処理場において確認しずらくなる可能性があります。
また、2回目の投与前の高齢の雄豚は、性的および攻撃的な行動がみられ、問題となることもあります。この場合、生産者は獣医師と相談して特別の投与プログラムを検討する必要があるかもしれません。
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インプルバック投与豚は、ケンカや乗駕のような雄行動を示しますか、その場合どう対処できますか?
インプロバックはテストステロンの生成など精巣機能を一時的に抑制するので、確実にインプロバックを投与された豚の行動は、外科的去勢豚と類似したものになります。通常の農場では、2回目の注射が生後22週以内に実施されるため、雄行動は起こりにくい。しかしながら、2回目注射が22週齢を過ぎると、豚の品種と飼育方法によっては問題が起こる可能性もあります。別群の豚と混飼せずに同じグループで飼育することで、雄行動の問題は最小限に抑えられます。大規模生産者で、性的あるいは攻撃的な雄行動問題が発生しているケースでは、特別の投与プログラムを検討する必要があるので、獣医師に相談してください。
すべての豚肉から雄臭を除くことを保証できる飼育方法はありません。雌豚と外科的去勢豚であってもたまに不快臭があることがあります。
重要なのは、化学分析または、さらに重要度の高い臭覚分析で検出可能な不快臭は、現在の飼育方法では、雌豚と外科的去勢豚から100%除去できないことということです。例えば、最近の米国での調査によると、雌豚および外科的去勢豚の1-3%が、臭覚分析で高い不快臭スコアを示しており、高濃度のアンドロステノンとスカトールの一方または両方を有していました。
これら雄臭原因は、停留精巣(陰睾)、外科的去勢の技術的ミス、あるいは、糞尿で汚染された環境でスカトール(主な雄臭物質)が皮膚から吸収された結果かも知れません。
一方、一般農場において、2000頭を超えるインプロバック投与豚を調査したところ、雄臭の発現は1%未満でした。したがって、インプロバックは、外科的去勢と同等な雄臭コントロールが期待されます。
最終的な雄臭判断は実際に豚肉を食することですが、多くの消費者による官能試験において、たとえ非常に臭いに感受性が高いパネリストであっても、インプロバック投与した豚の肉と外科的去勢豚または雌豚の肉との違いを見出せないことが確認されました。
年齢の制限はありません、インプロバックは無去勢雄豚の年齢に関わらず使用可能です。繁殖用の無去勢豚には使用すべきではありませんが、繁殖の必要がなくなった成熟豚には使えます。通常の使用法に従ってください。
消費者にとっての利益は、インプロバックは、動物にはよりやさしく、環境に配慮した免疫学的去勢製剤であり、外科的去勢豚と同じ品質の肉が得られることです。
その理由は、子豚の外科的去勢に替わる、動物に優しい免疫学的去勢方法だからです。インプロバック投与豚は、飼育期間の殆どを去勢しないまま育てられるので、外科的去勢豚に比べ、より良い飼料要求率で良質の枝肉を生産でき、しかも雄臭や雄豚行動のコントロールが可能になります。インプロバックは外科的去勢による飼育方法に比べ、飼料要求量と排泄量の軽減だけでなく、より環境に配慮した地球にやさしい豚肉生産が期待できる製品です。つまり、インプロバックの使用は、動物に与える苦痛を最小にしながら高品質豚肉生産を目指すことにより、社会に貢献することにあります。
試験結果により、インプロバックを投与した豚は外科的去勢豚にくらべ、飼料要求率が改善されることが示されています。これは、生産する豚肉1kg当たりに費やす農業資源が少なくてすみ、排泄物量が少なくなることを意味します。
なぜインプロバックがオーストラリアとニュージーランド以外の国々に導入されるのに長い期間かかったのですか?
インプロバックは本来、オーストラリアの農業省所属研究所と地域のアニマルヘルス会社との共同研究で開発され、1998年に販売を開始しました。しかし、開発した会社(CSL社)が当時アニマルヘルス市場ではグローバルな存在ではなく、海外市場への導入に至りませんでした。その後、2004年にファイザーアニマルヘルス事業部門が CSL 社とその製品を買収した結果、インプロバックが世界の豚生産に革命を起こすべく、世界に向けてインプロバックの開発が開始されました。
インプロバックは、世界中で徐々に承認されており、現在、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ロシア、ブラジル、メキシコ、チリ、タイ、韓国、南アフリカ、フィリピン、EU全域など50ヶ国以上で登録されています。その他の豚生産主要国(カナダ、米国、台湾)でも現在申請手続き中です。
2つの主な成分、精巣で生成されテストステロンに類似したアンドロステノン、および豚の腸内細菌により生成されるスカトールです。これらの成分量は、雄豚が春期発動期に入る時(約13~14週齢)および、テストステロンとアンドロステノン産生が一時的に急上昇する時に増加します。
雄臭の原因となるこれらの成分は高い脂溶性であるため、豚肉の加熱時に認められます。そのため、調理中に臭いが発生し、食べる際に不快臭/味となります。
雄臭は主に雄豚で発生しますが、雄豚だけに限りません。年齢や品種、飼育条件により異なりますが、豚群の約半分が不快臭を示すことがあります。
雄豚の中には、他の豚に比べ雄臭物質を生まれつき多量に産生する豚もいれば、雄臭物質産生量の少ない豚もいるからです。また、雄豚の年齢、体重、飼料や飼育環境など、他の多くの要因も雄臭の発生に影響します。
いいえ、雄臭は雄豚で正常な性的発達の結果起こる現象です。
いいえ、雄臭は食品の品質上の問題であって、食品の安全性の問題ではありません。雄臭があっても病的な影響はないので、臭いを我慢できれば、食べても問題ありません。
これについては膨大な調査が行われましたが、現時点で言えることは、「不可能」ということです。雄臭は、調理時に最も容易に確認されますが、その時点では消費者には遅すぎます。
従来、確実に雄臭を除去する方法は1つしかありませんでした。それは、外科的去勢です。主に雄臭コントロールのために、世界の雄豚の95%以上が去勢されていると推定されます。しかしながら、外科的去勢は、豚にストレスがかかり、その結果生産効率が低下する可能性があります。
近年開発されたインプロバックは、生産者に、外科的去勢と同様の雄臭をコントロールする免疫学的去勢方法の提供を可能にしました。